catch-img

トラック新法とは?法改正の背景・重要ポイントと運送会社が生き残るための具体策を専門家が解説

こんにちは。株式会社ディ・クリエイト代表の、上西一美です。 私は大学卒業後にタクシー会社へ入社し、27歳で社長に就任してから計1,000人の乗務員を採用・育成し、運輸監査を12回経験してきました。その後、約20年以上にわたり交通事故防止の取り組みを進め、これまでに2万件以上のドライブレコーダー映像の事故分析を行っています。私の確固たる信念は「運転行動を変えることで、交通事故は必ず防げる」というものです。

さて、物流業界に大きな変革をもたらしている「トラック新法」。2024年問題への対応が急務となる中、法改正の全容や自社への影響について不安を抱えている運送事業者の方は多いでしょう。

今回は、単なる法律の解説にとどまらず、交通事故防止と監査対応の専門家である私の現場目線、そして少し斜めからの視点も交えながら、トラック新法の深い背景をお話しします。

さらに、運送会社がこの淘汰の時代を生き残り、選ばれる企業になるための具体策や、強力な武器となる「AIドライブレコーダー」の本当の選び方まで、徹底的に解説していきます。

目次[非表示]

  1. 1.「トラック新法」とは?法改正の概要
    1. 1.1.1. 5年ごとの許可更新制度の導入(実質的な免許制へ)
    2. 1.2.2. 多重下請け構造の是正(原則2次下請けまで)
    3. 1.3.3. 適正原価を下回る「運賃の禁止」と「荷主への責任強化」
    4. 1.4.4. 白トラへの規制強化
  2. 2.法改正の裏にある「3つの深い背景」
    1. 2.1.1. タクシー・バス業界に続く監査の厳格化の波
    2. 2.2.2. 相次ぐ重大事故と人間の生理的な限界
    3. 2.3.3. 運賃低下=安全低下の悪循環と、水屋による中抜き
  3. 3.トラック新法で運送会社が生き残るための具体策
    1. 3.1.1. 利益を意識した論理的な運賃交渉
    2. 3.2.2. 多重下請けからの脱却と直接契約を勝ち取る営業力
    3. 3.3.3. 万が一に備えた監査リスクの軽減
  4. 4.根本の事故を防ぐ「AIドライブレコーダー」
    1. 4.1.注意では事故は減らない。AIで運転行動を変える
    2. 4.2.管理画面の使いやすさより低速時に作動するかが命
      1. 4.2.1.Nauto担当者
  5. 5.まとめ

「トラック新法」とは?法改正の概要

背景をお話しする前に、まずは「トラック新法とは具体的に何が変わるのか」について、重要なポイントを整理しておきましょう。

トラック新法とは、2025年6月に成立した「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」と「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」の2つを一体的にまとめた呼称です。物流業界におけるドライバー不足や長時間労働、多重下請け構造を是正するため、非常に大きなパラダイムシフトが起きています。

具体的には、以下の4つが目玉となる大きな変更点です。

1. 5年ごとの許可更新制度の導入(実質的な免許制へ)

これまで一般貨物自動車運送事業の許可は「一度取れば有効期限がない(誰でもずっと続けられる)」というものでした。しかし今回の新法で、5年ごとに安全管理体制や法令遵守の状況に関する厳しい審査を受ける更新制に変わりました。つまり、国が定める基準を守れない事業者は許可を取り消されることになり、限りなく免許制に近づいたと言えます。

2. 多重下請け構造の是正(原則2次下請けまで)

運送業界特有の、仕事が3次・4次と流れていく構造にメスが入りました。新法では再委託の回数が制限され、原則「2次下請け」までにとどめる努力義務が課されます。業界には自分でトラックを持たず仕事を手配してマージンを取る「水屋」と呼ばれる業態が存在しますが、彼らが間に入りすぎることで、末端の実運送事業者(実際に荷物を運ぶドライバー)に適正な運賃が渡らないという構造的な課題を解決する狙いがあります。

3. 適正原価を下回る「運賃の禁止」と「荷主への責任強化」

過度な値下げ競争を防ぐため、国が定める適正原価に基づいた最低運賃を下回る契約が禁止されます。また、これまで運送会社だけが苦しんでいた法令違反に対して、荷主企業(仕事を依頼する側)に対しても厳しい勧告制度が設けられるなど、ペナルティが強化されました。

4. 白トラへの規制強化

許可を持たない白ナンバーの自家用トラックによる違法な有償運送(白トラ)への規制が強化されました。万が一、荷主企業が違法な白トラ業者に業務を委託してしまった場合、荷主側にも責任が及ぶことが明文化され、取引先の選定においてより一層の透明性が求められるようになります。

法改正の裏にある「3つの深い背景」

トラック新法のベースに「物流2024年問題(ドライバーの時間外労働の上限規制)」があることは間違いありません。労働時間を減らしつつ、単価を上げていかなければならない背景があります。 しかし、専門家の立場から言わせていただくと、国がトラック業界にここまで強烈なメスを入れた真の理由は、もっと深いところにあります。

1. タクシー・バス業界に続く監査の厳格化の波

背景として絶対に見逃せないのが、国土交通省による監査の厳格化の流れです。過去に大手のタクシー会社が数百台規模の免許取り消し処分を受ける事件がありましたし、バス業界でも2012年の関越自動車道、2016年の軽井沢での痛ましい転落事故が起きました。

これらの事故を起こした会社の多くは、新規参入でしっかりとした運行管理ができていなかったのです。 これを受け、国交省はまずタクシー・バス業界の監査基準を極めて厳しくし、「運行管理ができない会社には業界から出て行ってもらう」という強い姿勢を打ち出しました。

その流れが落ち着き、いよいよトラック業界にも本格的に手を付け始めた、というのが裏の背景にあると私は見ています。

2. 相次ぐ重大事故と人間の生理的な限界

トラック業界でも、この間起きた新名神高速道路での多重事故(2026年3月)など、社会に衝撃を与える事故が連発しています。警察は「直前にしっかり休憩を取っていたから居眠りではない」と発表したりしますが、私の経験上、人間の眠気というのはハンドルを握って20分以内に一気に襲ってくるものです。

つまり、休憩を取ったからといって事故が防げるという安易な問題ではなく、社会全体として「重大事故を何としても減らさなければならない」という強い世論が高まった結果、5年ごとの許可更新制など、法律を厳格化せざるを得なかったのです。

3. 運賃低下=安全低下の悪循環と、水屋による中抜き

法律を厳しくしても、運送会社からは「適正な運賃をもらえないんだから、安全対策のやりようがない」という悲痛な声が上がります。

概要でも触れた通り、トラック業界には仕事が「3次受け、4次受け」と流れていく多重下請け構造が常態化しています。私が過去にコンサルに入ったある運送会社は、自社のトラックは数十台程度にもかかわらず、売上が数十億円もありました。つまり、仕事のほとんどを下請けに流し、水屋的な手数料(マージン)で利益を出していたのです。

この構造では、末端の運送会社に行くほど運賃が下がり、安全を担保できなくなります。今回、2次下請けまでの制限や荷主へのペナルティに踏み切ったのは、この「運賃が下がる」という本質的な課題を解決するためです。

トラック新法で運送会社が生き残るための具体策

少し厳しい言い方になりますが、国交省の担当者の中には「現在全国に6万社以上ある運送会社を、4万社程度まで抑えたい」と口にする人もいるほどです。

つまり国の本音としては、「適正な運行管理ができず、荷主と直接契約できる営業力もない小規模な運送会社には、業界から去ってほしい」ということなのです。

法令遵守のコストを運賃に転嫁できない企業は、事業の継続が困難になる時代に突入していくと認識すべきでしょう。では、どう生き残るべきか。私は以下がマストだと考えています。

1. 利益を意識した論理的な運賃交渉

従来の運送会社は、「大型なら大体これくらい」といった感覚だけで料金を決めているケースが非常に多いです。ひどい場合には、運賃が決まっていない状態でトラックを走らせ、月末に後出しで請求するような他業界ではあり得ない慣習すら存在します。

これからは、1km走るのに、あるいは1時間稼働するのにいくらの原価がかかるのかという利益意識を正確に把握する必要があります。客観的な数字のデータを持って「この金額では安全が担保できません」と論理的に荷主と交渉する営業力が絶対に必要です。

2. 多重下請けからの脱却と直接契約を勝ち取る営業力

2次受け、3次受け自体が絶対悪というわけではありませんが、結果として運賃が下落することが問題です。法規制によって大手運送会社が無制限に下請けに仕事を流せなくなれば、大手が手放した分の仕事を、荷主自身が優秀な中小運送会社(これまで3次受けだった会社など)と直接契約を結ぶ動きが必ず加速します。

このチャンスを黙って待つのではなく、自ら荷主にアプローチし、直接契約を勝ち取る営業体制を構築しなければなりません。そのためには、単に荷物を運ぶだけの運送屋という域から、安全管理や効率的な物流を提案できる運送会社という域にランクアップすることがマストです。

3. 万が一に備えた監査リスクの軽減

ぶっちゃけた話をすると、今のところ荷主は「安全意識が高いから」という理由だけで直接契約を結んでくれるわけではありません。しかし、逆は確実にあります。「事故を起こして、国交省から監査に入られ、ペナルティを受けた会社」とは契約を切るのです。監査でペナルティを受けると、5年間も国交省のホームページにネガティブ情報として掲載されてしまいます。

 万が一事故が起きて監査が入った際、「うちはこれだけのシステムを導入し、徹底した教育と運行管理を行っています」という客観的なエビデンスを提示できれば、お咎めなし、あるいは最小限の点数で済むケースが実際にあります。企業ブランドを守り、荷主に切られないための防衛策として、「事故を起こさない、かつ監査に耐えうる管理体制の構築」が生き残りの絶対条件となります。

根本の事故を防ぐ「AIドライブレコーダー」

運送会社が自社の安全性を証明するツールとして「AIドライブレコーダー」があります。ここからは、事故分析の専門家としてAIドライブレコーダーについてもお話します。

注意では事故は減らない。AIで運転行動を変える

交通事故というのは、口頭で「注意してね」と言ったり、ドライバー自身が「危ない」と思っていたりするだけでは絶対に減りません。なぜなら、危ないと思っていても物理的にブレーキを踏むなどの「運転行動」を変えなければ事故は起きるからです。 

人間が指導すると「お前に言われたくない」と反発を生んだり、管理者の感情や「あいつはでかい事故をやったイメージがある」といったバイアスが入ったりしてしまいます。 AIドライブレコーダーは、自分の運転を客観的に見て、危険な挙動に対してその場で淡々と、感情抜きで警告を出します。警察官に切符を切られるよりもドライバーは受け入れやすく、無意識の危険な癖に気づかせることで運転行動を根本から変えることができるのです。

またAIドライブレコーダー選びで絶対にやってはいけないのが、月額数千円の違いを惜しんで「安価な製品で安全対策をやっているふり」をしてしまうことです。ドライバーからの反発を恐れてアラートが鳴りにくいカメラを選ぶ経営者がいますが、私はよく「価格だけで選ぶなら、ホームページに『安全第二』って書いたらどうですか?」と厳しく言っています。

管理画面の使いやすさより低速時に作動するかが命

Nauto担当者

システム導入時、日本企業は細かなリクエストに対応した多機能な管理画面に惹かれがちです。しかし、管理画面がいくら使いやすくても、車載器の検知精度が低ければ本末転倒です。 特に重要なのが「低速走行時(時速20km以下)」の検知能力です。実は、歩行者巻き込みなどの人身事故の6割は、時速20km以下の交差点や渋滞時などの低速時に発生しています。

しかし多くのAIドライブレコーダーは、時速20km以下のわき見や眠気等の危険運転行為を検知できません。検知精度の不足から安全確認動作をわき見と誤検知してしまうため、安全確認動作の多発する速度帯の検知を切っている場合があります。Nautoは、ミラーを見るなどの安全確認行動と、ナビを見るなどのわき見行動を正確に区別できるため、最も事故リスクの高い低速時でも機能を切ることなく作動し続けます。カタログスペックや管理画面の見た目に惑わされず、この「本当に事故を防げる精度のAIか(網羅性)」を最優先に選んでください。

まとめ

トラック新法の施行は、長年放置されてきた運送業界の歪みを正すための、国を挙げた業界再編)のメッセージです。

「ドライバーから嫌われたくない」「コストをかけたくない」という理由で安全を後回しにする企業は、荷主からも国からも選ばれない時代になります。 「安全第二」と言い切る覚悟がないのであれば、まずは自社の運行管理体制を見直し、事故を未然に防ぎ会社を守るための本質的な投資から始めてみてはいかがでしょうか。

それが結果として、厳しい時代を勝ち抜く最強の生存戦略になると私は確信しています。

人気記事ランキング

タグ一覧

logo_img
ページトップへ戻る