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【交通安全ニュース解説コラム】第32回 「今」の自分の能力に合わせた運転を考える

みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
先日、福島県で97歳の男性が運転する車が歩道に乗り上げた状態で走行し、歩道にいた女性をはねるという死亡事故が発生しました。実はこの車両は女性をはねた後もしばらく走行し、信号待ちをしていた車3台に次々と衝突しています。事故のニュースが配信された当時、運転者の年齢が高齢だったこともあり、様々な意見がネット上に飛び交いました。

重要なのは、能力に合わせた運転ができるか、できないか

歳を重ねるにつれ、やはり体力や視力、反射神経というのは衰えていきます。だからといって、高齢であることが事故の直接原因になるとは思っていません。
身体能力の衰えでリスクは確かに高くなります。しかしそれ以上に、事故を起こす要因として見過ごせないのが、“自分を知っているかどうか”ということです。
自分の性格や体の衰えを理解して、自分の運転能力が現在どのレベルかを正しく判断できていれば、それに合わせた運転ができます。
一方で、自分の身体能力の衰えを自覚していない、あるいは運転にどのような影響があるかを理解していない場合は、能力に合わせた運転ができないため、事故を起こす危険性が非常に高いのです。
実際、老眼が始まっているが自覚症状がない40代や50代の人には、見えづらくなっているにも関わらず若い時と同じような運転をしてしまい、認知が遅れたり認知できなかったりして事故を起こしてしまうケースもあります。
認知とは目で見たものを脳で処理することですから、視力の低下はやはり大きな影響を与えます。
動体視力の衰えもまた、運転には致命的な要素と言えます。運転中は動きながら動いているものを見て判断しますから、動体視力の良し悪しは運転能力に大きく関わってくるのです。
この動体視力は40歳前後から徐々に落ち始めて、55歳から60歳くらいで一気に落ちると言われています。
一気に能力が衰えた人は「見えない」という自覚症状があるので、事故を起こさないために、衰えに応じて自分の運転を変えようとします。
しかし、自覚症状がないと「見えている」と思い込んでいるので、運転行動が変わらないのです。
自覚症状がない時期から「年齢的には衰え始めている可能性がある」と意識してみてください。
意識することで、運転中に起こる小さな変化に気が付けるようになると思います。
40代から50代前半の方は特に気を付けてください。
55歳以上の方であきらかに見えなくなっている人は、あきらめて速度を落として運転をしてください。車間距離を空けてください。
反射神経も衰えていきますから、ペダルの踏みかえにも時間がかかるようになります。
徐行や減速が必要な場面では、アクセルから足を離して構えブレーキにし、いつでもブレーキを踏めるようにしてください。

性格に応じた起きやすいミスも想定しておく

アクセルとブレーキを踏み間違えた後に暴走してしまう事故では、「自分が踏み間違えるはずがない」と思っているがために、踏み間違えているアクセルをブレーキだと思い込んでさらに踏み込んでしまい暴走してしまうのです。
また、自分が間違えるはずがないと思い込んでいる人は、事故の原因が車にあると証言する傾向にあります。
実は私も40代の時に一度踏み間違いをしたことがあります。幸い事故にはなりませんでした。
というのも、踏み間違えた直後にそのことに気が付いて、すぐにアクセルから足を離してブレーキに踏みかえられたからです。
私は自分が性格的にうっかりしたところがあると自覚しているので、常に「いつかミスをおかすかもしれない」と思いながら運転をしています。
その意識が功を奏して、すぐに踏みかえができたのだと思います。
年齢に係わらず、正確や能力に合わせた運転ができないのであれば、運転はするべきではないと思います。
衰えは誰にでもやってきます。定期的に、自分の運転能力を見直すようにしてください。

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執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター

1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。

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