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【交通安全ニュース解説コラム】第62回 状況に応じた速度と車間距離を

みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
3月1日、長野県小諸市の上信越自動車道で、同時間帯に約20件もの多重事故が発生しました。
事故は小諸と佐久インターチェンジの間のおよそ2 kmの間で起こっており、48台もの車が関係していたという発表でした。
事故によって、1人が亡くなられています。
当時、現場付近では雪はやんでいたものの、濃い霧に覆われて視界が悪かったことが、事故に大きく関係していると思われます。

道路交通法施行令では、夜間以外でも灯火をつけなければならない場合が定められています。
第19条第1項に「トンネルの中、濃霧がかかっている場所その他の場所で、視界が高速自動車国道及び自動車専用道路においては二百メートル、その他の道路においては五十メートル以下であるような暗い場所を通行する場合及び当該場所に停車し、または駐車している場合とする」と記載があります。
今回の事故では、事故を目撃した運転者が「霧がすごくて、前方20メートルくらいしか見えなかった」と証言をしています。
このような状況なので、多くの車は前照灯をつけて走行していた可能性があります。
しかしながら、20件ものの事故が起こっていることを見ると、安全な速度で車間距離を保持して走行していたのかは、疑問が残ります。

天候と路面状況で速度を判断する

高速道路上で、「停車している車がいるはずがない」「制限速度は守っているから大丈夫」という考えで、天候や路面状況を考えずに運転をしてしまうと非常に危険です。
実際、今回の多重事故に巻き込まれた人の中には、「霧でほとんど視界がなかった。発煙筒が目に入り右車線に進路変更をしたが、止まったところに大型トラックが突っ込んできた」と話している運転者もいたようです。
なぜ止まったのかまでは報道されていなかったので、停止理由は分かりませんが、高速道路上でも停止している車がいるかもしれないという認識は持つようにしてください。
事故当時のように、ほとんど視界がない状態で運転しなければならない場合は、道路上で事故が起こっているかもしれない、止まっている車が見えないかもしれないという意識を持ち、安全に走行できる速度で運転するようにしてください。
たとえ高速道路であっても、前が見えないのであれば、速度を落として走行してください。

また、路面状態も、凍結あるいはアイスバーンの状態だった可能性があります。
このような路面状態では、乾いた路面と比べて停止距離が長くなります。
JAF(日本自動車連盟)では、路面が乾いておりタイヤが新しい場合は、時速100 kmでは100 mの車間距離、時速80 kmでは80 mの車間距離が必要としており、路面が濡れていてタイヤが減っている場合にはその2倍程度の車間距離を取るように推奨しています。

4月からは、総重量8トン以上の中大型トラックに対する速度上限が緩和され、高速道路での最高速度が現行の時速80 kmから時速90 kmに変わります。
規制緩和は、物流業界での人手不足が深刻化する「2024年問題」に絡んだ政策で、実際に2024年問題の解決策になり得るのかは甚だ疑問ではありますが、効率性を追求するとリスクが上がるのは確実です。
私のクライアントには、制限速度が引き上げになっても安全を優先して時速80 km制限のまま運用すると話す企業も多数います。
「違反ではないから」という判断で速度を上げるのではなく、安全かどうかで走行する際の速度を決めてください。

 

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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター

1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。

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