【交通安全ニュース解説コラム】第55回 子供との事故を避けるには
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
今月9日に、京都府で小学生がダンプカーにはねられて亡くなるという事故が起こりました。
運転者は警察の調べに対して「会話に気を取られて、前を見られていなかった」と話しているそうです。
運転者は過失運転致死の疑いで逮捕されました。
見落としを補うために
交通事故の原因の大半は見落としです。
しかし、人は見落としをゼロにすることはできません。
そこで重要になってくるのが、視覚以外の情報です。
特に聴覚によって入って来る情報というのは、車の運転において非常に大切なものとなってきます。
万が一見落としをしたとしても、子供の声や、他の車両やバイクのエンジン音など、耳からの情報によって相手の存在を把握して対応することで、事故が防げるケースもあるのです。
聴覚による情報を得るためにも、窓を少し開けたり、カーオーディオの音量を抑えたりして、なるべく多くの情報が入るようにしてください。
また、前述した事故の運転者のように「会話に気を取られて」安全確認がおろそかになることもあります。
これは同乗者との会話だけでなく、携帯電話での会話でも同じことが起こりえます。
ハンズフリーだから大丈夫だと思って通話しながら運転をするのも、危険なのでやめてください。
いわゆる「ながら運転」となる状態でハンドルを握るのは、大きな危険が伴うことを、改めて認識していただきたいと思います。
子供の事故が多いのは下校時間帯
冒頭で取り上げた事故は、放課後の時間帯である15時半頃に起こりました。
子供の事故が最も多く発生するのが15時から17時の間です。
登校時間帯よりも下校時間帯である夕方に事故が多いのは、子供たちの心理状態も少なからず影響していると思われます。
登校時間には、「学校に行く」という目的があり、また最近では集団登校を行っている学校も多いことから、子供たちにとって自由度の低い状態で歩行していることになります。
ところが、下校時間帯というのは、「家に帰るだけ」という予定のない状態であり、また、各々で通学路を歩くことが多く、行動に関しても制約がない状態です。
この自由に動けるという心の状態が、動きにも影響を及ぼしているのではないかと考えられます。
また、子供は危険感受性が低いため、周囲の危険に関しての認識が正しくできないことも多々あります。
過去に分析したヒヤリハットのドライブレコーダー映像では、歩道をじゃれあいながら歩く子供たちの一人が、うっかり車道に飛び出したというものもありました。
幸い、運転者が子供を視認した時点で徐行し、すぐにブレーキを踏んで止まれる状態にしていたため、事故には至りませんでした。
危険感受性が低い子供たちは、どのような場所で、どのような行動を取ることで、どんな危険が起こり得るのかがイメージしにくく、大人が予想もしない動きをすることがあるのです。
運転者はそのことを念頭に置き、子供の存在に気づいたら、事故防止のための運転行動を取るようにしてください。
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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。