導入事例
2026.06.11
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Nauto Safety Stories: 警告件数を約87%削減――SBSロジコムがAIドラレコで実現した、850台規模の安全文化の浸透
- SBSロジコム株式会社
- 常務執行役員 管理本部長・経営企画部長 中藤 和生 氏 、経営企画部 土井 香代子 氏、運行管理部 安全管理課 係長 楠本 庸介 氏 、横浜町田支店 支店長 長野 良正 氏
物流業界全体で安全への要求がかつてないほど高まる中、安全品質は単なる努力目標ではなく、経営の根幹を揺るがす戦略的課題となっています。特に3PL(サードパーティ・ロジスティクス)を主軸とする企業にとって、一度の重大事故は荷主からの信頼を失墜させ、事業継続を危うくする致命傷になりかねません。
総合物流企業として業界をリードするSBSロジコム様もまた、従来の管理手法だけでは改善できない状況に直面していました。同社が抱えていた最大の懸念は、事故件数が横ばいから減少しないという停滞感です。従来のアナログな管理体制や旧来型ドライブレコーダーでは、ドライバーが営業所を出発した後の行動を把握できず、脇見やよそ見といった「潜在的なリスク」を未然に防ぐ手立てが不足していました。
こうした中、同社は安全管理を個人のスキルや注意不足という属人的な問題として片付けるのではなく、組織のシステムとして標準化する決断を下しました。AIによる可視化を導入することで、リスクを未然に防ぐ仕組みを構築し、社会的責任を果たす。この戦略的転換の鍵となったのが「ナウト」でした。
- 導入の背景(課題)
- 変わらない事故件数とアナログ管理の限界
- ドライバーの高齢化と未経験者の増加
- 車庫出発後の走行リスクのブラックボックス化
- 導入の決め手
- スマートフォン保持を独立検知する圧倒的技術力
- 膨大な走行データによる高精度な警告判定
- 現場の感覚と乖離のない独自のAIスコア
- 導入効果
- 週末の警告メール件数が約80%減少
- 60分かかっていた事故状況の把握が、わずか10分に短縮
- 安全運転を正当に評価する新文化の醸成
変わらない事故件数の改善へ、850台の車両を守る「AIの目」の検討

常務執行役員 管理本部長・経営企画部長 中藤 和生 氏
――ナウトの導入を検討された背景には、どのような危機感があったのでしょうか。
中藤氏:物流企業にとって事故を起こさないことは第一の使命です。しかし、当社の事故件数はここ数年、減ることなく横ばいの状態が続いていました。現場を注視すると未経験ドライバーの増加やベテラン層の高齢化という構造的な課題が浮き彫りになっていました。特に我々が最も恐れているのは脇見やよそ見、あるいはスマートフォンの操作が起因となる重大事故です。これらはひとたび発生すれば、企業のブランド価値を一夜にして失墜させるだけでなく、経営に甚大なダメージを与えます。
当社の事業規模は、事業用トラック約850台、ドライバー約900人に及びます。これほど膨大なリソースが日々道路を走っている中で、管理者が朝の点呼で見送った後、車両が戻ってくるまでの数時間は、安全管理が実質的にドライバー個人の資質に委ねられた「ブラックボックス」となっていました。管理者が24時間、全車両の映像を見守り続けることは物理的に不可能です。
私たちが求めていたのは、管理者の代わりに「AIの目」が走行中のリスクをリアルタイムで検知し、その場でドライバーに警告を発して軌道修正を促す仕組みでした。見えないリスクをデータとして可視化し、重大事故を未然に防ぐ。それが、850台の車両と900人の命を守り、3PLとしての品質を担保するために不可欠な決断だったのです。
他社を圧倒するAI技術、スマートフォンもピンポイントで特定するナウトの検知精度
――数あるAIドラレコの中で、最終的にナウトを選ばれた要因は何だったのでしょうか。
土井氏:複数の製品を比較検討しましたが、ナウトの検知精度は群を抜いていました。特に決定打となったのは、他社が脇見の一種として一括りにしがちなスマートフォンの使用・保持を独立した項目としてピンポイントで識別・検知できる点です。ながら運転の温床となるスマートフォンの使用は、物流企業として絶対に見過ごせないリスクです。これを明確にエビデンスとして抽出できる機能は、現場指導における納得感を高める上で極めて重要でした。

経営企画部 土井 香代子 氏
またAIのアルゴリズムを支える累積走行距離という分母の大きさも信頼の根拠となりました。AIはデータ量が多いほど賢くなります。膨大な走行データに基づいたナウトの判定は、誤検知が極めて少なく、算出されるナウトのベラスコア(安全スコア)が現場のプロドライバーが抱く「あの人は運転が上手い、丁寧だ」という肌感覚と見事に一致していました。
単に多機能であること以上に現場の人間が「このAIの判定なら納得できる」と思える客観性があること。組織全体にシステムを浸透させ、血の通った指導を行うためには、この精度の高さこそが不可欠な条件でした。
全35支店への展開、反対の声を納得に変えた動画の真実味
――全35支店、850台規模の導入となると、現場の抵抗感も大きかったのではないでしょうか。
土井氏:管理側である支店長の中にも、新たなツールの導入を負担に感じ、慎重な姿勢を見せる者がいたのは事実です。しかし私たちは粘り強く説明を続けました。これは監視のためではなく、事故の加害者になることからドライバー自身を守り、プロとしての優れたスキルを数字で証明するためのパートナーなのだと。大きな転機となったのは、実際にナウトが記録した自社のヒヤリハット動画の共有です。
例えば無意識のうちに行っていたスマートフォンの操作やコンマ数秒の脇見がいかに危険な状況を招いているか。客観的な映像として突きつけられた時、それまで疑念を抱いていた支店長やドライバーたちも自らの死角を認め、沈黙し、最後には納得してくれました。またナウトはイベント発生時のみを切り取る通信型であるため、プライバシーへの配慮がなされている点も安心感に繋がりました。今ではアラートが鳴ることで「ハッとして事故を回避できた」という声が現場から自発的に上がるようになり、心理的なハードルは完全に払拭されています。
――実際の現場からみて正直な声はどうでしたか?
長野氏:正直なところ、導入当初は組合やドライバーから「常に監視されているのではないか」という抵抗感や緊張感を持つスタッフは少なからずいました。 しかし、ドライバーには「本社や誰かが常時映像を見ているわけではなくAIが見ている。危険なアラートが起きた時だけ映像が切り取られる仕組みだから、変に緊張せず、今まで通り自然に運転してくれればいい」と丁寧に説明し、過度な緊張をほぐすようにしました。
――実際に運用が始まってから、現場の意識や行動に変化は見られましたか?
長野氏:はい、大きく変わりました。特に効果を感じているのはベテラン層への指導です。運転に慣れすぎて「自分は大丈夫だ」と過信しがちなのはベテランに多く、実はスコアに関しても新人ドライバーの方が良い結果を出す傾向にありました。そうしたベテラン層にも、自社で撮影された事故ギリギリの映像を見せると「これは気をつけなければ」と素直に改善に向かいます。

ナウトでドライバーのクセを分析し、適切な指導に活用 横浜町田支店 支店長 長野 良正 氏
週末の警告メールが導入当初から約87%削減、数字で証明された安全文化の浸透
――導入後、数値面ではどのような変化が現れていますか。
楠本氏:最も顕著で、かつ管理者にとって衝撃的だったのは、週末や休日明けの警告メール通知数の劇的な減少です。導入当初、月曜日の朝にメールボックスを開くと、週末分だけで80件もの危険挙動アラートが溜まっており、その対応だけで管理業務が圧迫されるほどでした。しかし、現在ではその数が誤検知も含めて10件程度にまで減少しています。約87%の削減です。
これは、ドライバーが自身のベラスコアを意識し、AIからのリアルタイム警告を受けるたびに、その場で運転を自己修正するようになった結果です。特筆すべきは、重大事故に直結しやすい速度が出ている状態での追突事故が、導入以降一件も発生していない点です。管理側の視点では、警告数が減ったことで一つひとつの事象に対して深く向き合い、質の高い指導ができるようになりました。単に「注意しろ」と言うのではなく、「この動画のこの瞬間が危なかった」と具体的エビデンスに基づいたコミュニケーションが可能になった。この変化こそが、SBSロジコムの安全文化をより高次元なものへと押し上げています。
60分かかっていた事故状況の把握が、わずか10分に。リアルタイム通知が実現する圧倒的スピードの危機管理体制

運行管理部 安全管理課 係長 楠本 庸介 氏
――事故発生時の対応スピードについても、大きな改善があったと伺いました。
楠本氏:はい。万が一の事故が発生した際の初動スピードは、物流企業のレジリエンス(回復力)を決定づけます。これまでは、事故発生から警察対応、ドライバーからの事後報告、支店への帰社、そしてSDカードの物理的な回収と映像確認……というプロセスを経ていました。状況を把握できるまでに、早くても1時間はかかっていたのです。特に事故直後の20分から30分間は、現場が警察対応に追われるため支店には連絡が入らず、管理側にとっては全く状況がわからない空白の時間でした。
しかしナウト導入後は、強い衝撃を検知した瞬間に管理者の元へ映像付きの通知が届きます。事故発生からわずか5分から10分で、支店にいながら現場の状況を克明に把握できるようになったのです。つまり、対応時間を約50分短縮(⅙短縮)できたことになります。
この50分の差は計り知れません。状況を即座に把握できれば、迅速な顧客への報告、代品の出庫手配、二次災害の防止指示などが瞬時に行えます。ナウトは単なる事故防止ツールではなく、物流企業の危機管理体制をDX化する強力なソリューションであると確信しています。

アラートの発生場所や映像も簡単に確認でき、迅速な対応が可能に
安全運転を正当に評価し、頑張った人が報われる物流DXの最終形
――今後、この取り組みをどのように発展させていく予定ですか。
楠本氏:これからは安全運転を守って当たり前の義務から頑張った人が正当に評価される付加価値へと変えていきたいと考えています。ナウトの公平な安全スコアを活用すれば、模範的な運転を継続しているドライバーを可視化できます。今後はこれに基づいた表彰制度などを整え、称賛される文化を定着させます。
また、蓄積された自社のリアルなヒヤリハット映像は、外部の既製品教材よりもはるかに説得力のある教育資産です。「あの拠点のあの交差点で、仲間のドライバーがこうした危険に遭った」という生きた教材は、ドライバーの疑似体験として強い印象を残します。安全を個人の意識の問題に留めず、データに基づいた評価文化と共有知として組織に根付かせること。それが、SBSロジコムが目指す物流DXの完成形です。
全ての物流組織へ――AIという客観的な目を持つことの推奨
中藤氏:「うちはベテランが多いから、昔ながらのやり方で大丈夫だ」という過信こそが、現代の物流組織における最大の盲点です。熟練の技術は尊重すべきですが、人間である以上、体調の変化や慣れによる一瞬の死角は避けられません。
AIという客観的な目を持つことは、決してドライバーを疑うことではありません。むしろ、プロとしてのドライバーの命を本気で守り、同時に企業の社会的責任を完遂するための、最も誠実な投資です。管理の属人化に限界を感じ、真の安全品質を追求したいと考える全ての組織に、AIドラレコがもたらす「納得感のある安全」をぜひ体感していただきたいと願っています。
取材協力: SBSロジコム株式会社 (https://www.sbs-logicom.co.jp/)