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【交通安全ニュース解説コラム】第34回 事故発生時に生じる義務

みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
12月下旬に沖縄県で、学校からの帰宅途中に横断歩道を渡っていた小学2年生の女の子が、右折してきた軽自動車にはねられる事件が発生しました。
「事件」と書いたのには理由があって、軽自動車の運転者は接触した後に相手の小学生が「大丈夫」と言ったことを理由にその場を立ち去ってしまったからなのです。
これは、ひき逃げ事件となります。
運転者は、過失運転致傷と救護義務違反の疑いで書類送検されるようです。

運転者には報告義務がある

私がタクシー会社の社長をしていた時ですが、この事件と同様のことが数件ありました。
どの事故でも、相手が「大丈夫」と言ったことでタクシーの運転者はその場を離れてしまいました。
冒頭の軽自動車の運転者も、相手の女の子が「大丈夫」と言ったから、救急にも警察にも連絡をせずにその場を離れてしまいました。
まずここでお伝えしておきたいのは、子供相手に示談は成立しないということです。
そして何より、運転者は事故を起こした際には警察に報告しなければならないと、道路交通法第72条で定められています。
相手が子供であろうが大人であろうが、怪我をしていようがしていまいが、報告する義務があるのです。
警察への報告義務を怠ってしまうと、ひき逃げ事件となります。
相手が子供の場合は、「大人に怒られるから怖い」といった感情が何より先に湧いてしまい、とにかくその場から離れたいと思ってしまう場合が多いようです。
子供からしてみたら、どんな時でもやはり知らない大人は怖く見えてしまいます。
ましてや事故に巻き込まれてしまったその瞬間ですから、その場から離れるために「大丈夫」と言うこともあるのです。
相手の怪我がたいしたことはないように見えても、それは運転者の勝手な判断にすぎません。
勝手な判断は絶対にせずに、すぐに警察と救急に連絡を入れてください。

立ち去ると詐欺事件に巻き込まれることも

過去に私が携わった事故で、クラクションを鳴らしたら相手が転んでしまい、人身事故となったケースもありました。
相手が転倒した場合には、接触していなかったとしても、自分が原因を作ったのではないかと考えて車を止めて安否確認をしてください。
時々、「相手が信号無視をしたから自分に責任はない」と言う方がいますが、報告義務は「事故があった時」に発生するものです。
相手が「大丈夫」と言って立ち去った場合でも、その場から警察に通報して起こったことを報告してください。
相手が立ち去ってしまったが自分はどうしたらよいか、警察に指示を仰いでください。
報告をすることで、ひき逃げ事件にはなりません。
報告をしなければ、ひき逃げ事件や当て逃げ事件となりますし、場合によっては詐欺事件に巻き込まれてしまうこともあります。
詐欺事件のやり口の一例ですが、コンビニエンスストアの駐車場などで車と接触して、被害者は「大丈夫だから」と言って運転者を安心させ、運転者がその場を離れた直後に警察に「相手が逃げた」と通報するのです。
被害者は最初から詐欺を働くつもりですから、当然、車のナンバーも控えられています。
警察官の前で、被害者は運転者に対して「逃げましたね。人身事故にするんですか、示談にするんですか」と詰め寄ります。そして、最終的にお金を取るというようなことが起こり得るのです。
事故の当事者になったら、現場からの報告義務と救護義務が発生することを、しっかりと覚えておいてください。

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執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター

1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。

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